PROJECT 研究室の取り組み

都市環境デザインスタジオ

スタジオの趣旨

都市環境デザインスタジオは、東京大学、東京理科大学、千葉大学、筑波大学といったつくばエクスプレス沿線に立地する大学の共同開催により実施されている実践的演習科目です。柏の葉キャンパス駅周辺を対象に、地区スケールのデザインを含む演習として、『柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)』との連携のもとで開催されています。市民、自治体、企業との討論や公開講評会を通じ、特色あるスタジオとしての成果も上げています。

 

■ 地区スケールのデザインを学ぶ

都市は居住者の属性やライフスタイルの変化に応じて、地域のニーズや課題は時代と共に変化していきます。本スタジオは、フィールドに出て地域を解読することから始めます。居住者のニーズや生活パタンを把握し、都市の成り立ちや都市構造の解読を通じ、自然と共生した地域の可能性を追求していきます。グループ作業を通じて、人と人を結びつける仕掛けや社会学的なアプローチを学ぶことも期待されています。

 

■ 都市を解読し、知る

また、都市を「知ること」と「デザインすること」は、表裏一体です。本スタジオでは、都市環境デザインに求められる力として、都市を解読する方法を習得しつつ、現状の課題解決と共に予測し得る未来の都市活動をより魅力的にする地域社会の発展と都市環境のデザインの提案を行いますが、重要なのは将来予測に基づくサステナブルな都市のデザインです。

 

■ 都市のデザインとマネジメントの立案

本スタジオでは、コンセプトの立案、必要な施設の企画、土地利用計画から3次元の都市空間や景観のデザインまでを含む「都市環境デザイン」の提案と共に、数十年先までの変容のシナリオを描き、長期にわたり活発な都市活動を支える仕組みに至る住み続けるための「エリアマネジメント」の提案を通じ、サステナブルな都市デザインに求められる考え方、技術、手法の習得を目指します。

 

2021年度のテーマ

郊外の新しい街区デザイン

柏の葉地区では、東京大学、千葉大学をはじめとする教育研究機関が立地し、2005年8月につくばエクスプレスが開通してからは鉄道駅を中心とした都市開発が進められてきました。2008年3月には「柏の葉国際キャンパスタウン構想」が策定され、同構想に掲げられた目標や方針に基づき、UDCKを中心に様々な都市開発やまちづくりの活動が進められてきています。

同地区における都市開発は、駅を中心とした区画整理事業による道路基盤整備や土地の整序の進行に合わせて、駅中心部から外周部へと拡張して開発が進められていきます。インフラ整備と土地の整序が完了した街区から順次、住宅や各種施設が建設されていきますが、広大な地区に住宅や各種の施設が整備され、市街地が形成されていくには、長い時間スパンを要し、個々の街区や敷地においても計画から施設整備の過程を経て施設が建設され、都市活動が活発化していく区域が広がっていくには長い時間を要します。

同構想が策定されてからの5年間は、住宅建設を中心とした居住環境の整備に力が注がれてきました。すでに駅周辺には5千人以上の住民が超高層住宅などに入居しています。2014年にはゲートスクエアがオープンし、ホテル、商業施設、オフィス棟の複合機能が立地するようになり、2018年には新たな中学校が開校するなど、人々のくらしが定着してきました。柏の葉の駅周辺は、鉄道の駅と近郊のエリアの開発として、ある一定の姿が見えてきました。柏の葉キャンパス駅周辺で生活し、そこから通勤するというこれまで通りのライフスタイルの方々と、柏の葉で働きくらす方々の両方を取り入れながら、これまでとは違う様々な取り組みを取り入れて開発が進められています。

こうした郊外住宅地としての開発だけでなく、柏の葉キャンパス駅周辺では、最新のスマートシティを目指して、様々な取り組みが行われています。2019 年5 月には、「Society5.0」の実現に向けた国土交通省「スマートシティモデル事業」の先行モデルプロジェクトにも選ばれています。このようなまちづくりを通じて、住宅や商業のあるくらしの空間、オフィスなどの職場というだけでなく、新しい技術や価値を生み出す場、言わば「イノベーションを誘発する場」としての開発を目指しています。

柏の葉キャンパス駅から徒歩10 分程度の「柏の葉イノベーションキャンパス地区」を対象とします。この地区は、「機能複合型研究開発地区」として、住宅・商業・業務が融合した環境の中で、多様な交流から新たなビジネスが生まれるエリアを目指しています。対象地区では、2016 年に柏の葉T-SITE やアクアテラスがオープンし、2021 年1 月には、創業支援型の新たなオフィスビルKOIL TERRACE が完成しています。周辺には新たな商業ゾーンも生まれつつあります。現在地区内には、暫定利用として交通実証実験フィールドができていて、今後公道での実証実験も目指されています。

2021年度のスタジオは、この「柏の葉イノベーションキャンパス地区」を対象として、

1)イノベーションキャンパス地区のデザイン

2)街区のデザイン(エリア全体のデザイン)

3)住まう場所や働く場所等のデザイン(個々の街区・敷地における計画・設計)

を行うことを課題として取り組みました。

なお、2021年度は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、ハイブリッドでの活動を中心として課題に取り組みました。最終発表が急遽オンライン開催になるなどの制約の中、デジタルツールをより積極的に活用しながら提案内容を表現しました。

過去の演習テーマ

2006年度:柏の葉を拓く130の提案

2007年度:新しい公共空間を構想する

2008年度:新しい田園都市を構想する

2009年度:新しい田園都市をデザインする

2010年度:都市環境の再構築: 地域とともに考える街のリノベーション

2011年度:成長から成熟へのシナリオと郊外都市デザイン

2012年度:知的活動クラスターのデザイン

2013年度:柏の葉スタイルの緑と健康の郊外都市デザイン

2014年度:郊外のスマートグロース&シュリンキングの創造的暮らしとかたち

2015年度:長期的都市づくりにおける仮設的利用と暫定利用からの都市デザイン

2016年度:学生が住みたい街のデザイン

2017年度:住みやすいまちづくりのための『公共』のデザイン

2018年度:ワーク&ライフ・ハーモニーを実現する都市デザイン

2019年度:郊外での新しいくらし方を考えるⅠ

2020年度:郊外での新しいくらし方を考えるⅡ

2021年度:郊外の新しい街区デザイン